天候:1日目曇天稜線部ホワイトアウト、2日目以降安定し晴れ。
アクセス:JR普通列車/JR小梅線甲斐大泉駅下車。タクシーにて天女山口より入山。
※タクシー代金1000円前後。
Course MAP
DAY-1/天女山口~三ツ頭と権現岳の中間点コルにて幕営
DAY-2/中間コル~権現岳~行者小屋にて幕営
DAY-3/行者小屋~美濃戸口
…1月にも南八ヶ岳を歩いて、なかなか厳しくも美しい瞬間に出会える。そんな事が恋しくなり再び歩くことに。冬の山は寒くて飯もすぐに冷たくなるので辛いけど(根は夏山派)、こういう山旅もたまにはいいのです。
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【DAY-1】
早朝から行動したかったので、できるだけ現地に近づくために、仕事終わりに電車で中央線の大月駅まで移動。いわゆるステーションビバークをしたかったけど、駅舎の改装のため外のベンチで寝ることに。
今回の背中の相棒はmacpac。久々テントで寝ることに決めたので、これならたっぷり荷物が入るので冬の縦走などに使いやすいザック。
中央線から小梅線に乗り換える。目的の駅は甲斐大泉駅。ここからタクシーで天女山の登山口で下ろしてもらう。
冬期はゲートで封鎖されている。いつも通り出発前にもう一度荷物のチェックは欠かせない。
ゲートよりすこし歩いたところで先を示す看板を発見。
今日の行動予定は三ツ頭と権現岳の中間点あたりの樹林帯のどこかまで。テントを張るのに良さそうな場所に到着すれば、そこが今夜の寝床となる。
※幕営地は星野秀樹氏著書の『雪山放浪記』を参考にさせていただきました。
朝電車に乗っているときはいい天気だったのに、山に入ると何となくスッキリしない。
歩き出してすぐ天女山に到着。雪のない時期ならここまで車で上ってこれるので、身近な山と言った感じ。山頂までも踏み後がしっかりと残っていた。
山頂には東屋も。
これから進むべき山を確認できた。少し小雪がぱらつくようになり天候が変化。
稜線の方もガスが出たり入ったりするのが分かる。こうなると楽には登らせてくれなさそうな雰囲気で、心持ち少し緊張してくる。
三ツ頭の手前の、前三ツ頭まではしばらく樹林帯の道が続く。けっこうな急勾配もあり、気温のわりにいつもより多めに汗をかく。
前三ツ頭(標高2364m)
稜線まで上がってくると、それまでの樹林帯から山の様相が一変していた。
樹林帯の中にいた時はわからなかったのか、かなり風の吹く勢いが強く、視界も自由にききそうにない。
前三ツ頭から三ツ頭までの稜線では、かなり苦労させられた。いわゆるホワイトアウトってやつで数メートル先の視界がほとんど確認できない。
装備にGPSを持ってきたので、自分の進むべき方向を踏み外さないように少しずつ前進する。一面真っ白なので地形の高低差も均等に見えてきたし、自分の足元でさえわからない状況。
一瞬のガスの切れ目を待ちつつ…
樹林が近づくと稜線を外しているはずなので、それを頼りに前進する。
結局三ツ頭のピークを過ぎても状況は好転しなかった。気持ち的には今日の寝床をはやく見つけたくなってきたが、なかなか楽にはさせてくれない。
極めつけは、稜線歩きを終え、ようやく樹林帯のコルにさしかかっても風邪の勢いは相当激しく止まる気配がしない。普通なら木々が防風の役目をしてくれるのに、今回の状況は樹林帯の下側から稜線に向かって、風の通り道のようになっていた。普通に身体を持って行かれる。
どこかマシな場所はないものかと、探し回ったのだけれど意味の無い時間だった。
何とかテントを設営しようにも何回も風で飛ばされそうになり、ポールを通すのもままならない。必至に身体で押さえつつ何とか片側を通すことに成功。相変わらず風の勢いは強く、続けざまにどんどん追い打ちをかけてくる。
一瞬隙を見せたかと思い残る一本を通し終え、テントの張りを出すのにテンションをかけようとした場面で、ドカンと背中を押されるような風を食らってしまい、無残にもポールが一本破損してしまった。
こうなった場面でも対処できるよう、折れてしまった場所を緊急修理できるように、予備用のポールを持っていたけれど、風が強く今にも体温が奪われそうなこの状況では、それも諦めざるを得ない。
結局は折れたままの状況でも、残りの一本は残されているので、風で飛ばされないよう周りに雪を積み上げ無理やり設営。以前風の勢いは弱まらないけど、自分と荷物がテントに入ってしまえば、どうやら最悪の事態だけは避けれそうな感じには落ち着いた。
一日目は自然とかなり格闘してしまい予想以上に疲労感が大きい。
テントの地面にも積もった雪の凹凸がいびつで、落ち着けない。でも身体は正直なようで、とりあえず飯も食べずにいつのまにか熟睡してしまった。
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【DAY-2】
2日目はテントから顔を出すと、前日の様子から打って変わり無風。昨日はまともに栄養のある物を食べていないので、ものすごく朝から腹が減る。昨日の格闘の影響からなのか身体のふしぶしが痛いが、調理用の水分確保のためストーブで雪を溶かし、先ずはスープで冷えた身体を温める。
行動を開始する頃には気温もずいぶん上がってくれ、この晴天が嘘ではなく確信めいたものになった。
稜線では所々雪深い箇所はあるものの、全体には凍結気味で雪面がほどよく締まっている。
ゲイターを巻くのが面倒だったので横着したら案の定、深い雪に足を取られ、オーバーパンツをびりびりと破いてしまうアクシデントに見舞われた。やっぱり横着はいけないなと痛感…。
三ツ頭方面を振り返る。ピーク右下樹林帯が昨日の幕営地。
確認すると、しっかりと木々が密集しているのに、あそこまで強風が吹くなんて…やはり自然の力はこちらの想像、想定を遙かに超えてくるもんだなぁ。
南アルプスなどの山々も見渡せて気分が高揚してくる。
こうした景色はネット等で簡単に見ることは可能(自分のブログも含め)、だけども実際に訪れて生で見ると感動の大きさが違うし、自分の体験した事実として残るのでやはり意味のあることだ。
これだから昨日のような少し大変な(笑)事がたまには起こるけども、ハイキングはやめれない。
コリン・フレッチャー氏の言葉を引用すれば“歩くことの中毒性”がそこにはある。
三ツ頭から権現岳までの道は特に危険箇所もなく、アイゼンを確実に使えれば大丈夫なレベル。
この日の積雪具合など考慮しても夏道コースタイムとほとんど変化は見られなかった。
目立って見える大岩が飛び込んでくれば、もうすぐ権現岳の頂上に着く。
権現岳(標高2715m)の頂上に到着。山頂部にある大岩が迫力満点。他に小さい洞もありしっかりと確認できる物のひとつ。
青年小屋方面から歩いてくると、権現岳の頂上はこのように見える。
雪に埋もれた権現小屋(無雪期は営業小屋として。山頂直下のため冬期は使用不可。)と、東ギボシ。奥に小さく見えるのが西ギボシ。
権現岳の先には八ヶ岳主峰の赤岳や阿弥陀岳、そして難所と言われるキレットが目の前に飛び込んでくる。これも実に迫力があり素晴らしい景色。聞こえる音は皆無に近く、ほぼ無音の世界。この無音感も無駄な物を一切削ぎ落とした様があり、今まさに山に来ているなと実感させる。
これから先の旅の続きは後編で…
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【 COUCE TIME】
DAY-1/天女山口~三ツ頭と権現岳の中間点コル
天女山口(210分)前三ツ頭山頂(170分)中間コル幕営地点
DAY-2/中間コル~権現岳
中間コル(60分)権現岳
※積雪状況により行動時間は大幅に変わります。☞Hike Reportのページ。 …ハイキングした情報をUPしています。