2015-01-21

冬の南八ヶ岳縦走-後編-/八ヶ岳山域【長野県】

日程:3DAY/単独/2014年3月上旬
天候:1日目曇天稜線部ホワイトアウト、2日目以降安定し晴れ。
アクセス:JR普通列車/JR小梅線甲斐大泉駅下車。タクシーにて天女山口より入山。
※タクシー代金1000円前後。
Course MAP


【行程】
DAY-1/天女山口~三ツ頭と権現岳の中間点コルにて幕営
DAY-2/中間コル~権現岳~行者小屋にて幕営
DAY-3/行者小屋~美濃戸口

…1月にも南八ヶ岳を歩いて、なかなか厳しくも美しい瞬間に出会える。そんな事が恋しくなり再び歩くことに。冬の山は寒くて飯もすぐに冷たくなるので辛いけど(根は夏山派)、こういう山旅もたまにはいいのです。後編レポの始まり始まり~


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2日目に権現岳の山頂に立ち、その先のキレットを進み八ヶ岳の最高峰赤岳を目指す。
今まで一人として出会わなかったのが権現岳でようやく二人のワンパーティーと遭遇。一日だけなのに人と会わない日があると、なんだか久々に人間と遭遇した感じになる。
キレットには数年前の9月頃に歩いたきり久々の再訪歩き。キレットは漢字では“切戸”となる。両側がわりとすぱっと切れ落ちる地形に名付けられる場合が多いので、ここも訪れて見れば何となく納得できる形をしている。
歩くとそこまで細い幅にはなっていないので、しっかりとピッケルとアイゼンを効かしていけば滑落しにくくはなっているけども、やはり油断は禁物。滑落しても何も得にもならないし、自分の命は自己防衛が肝心。パーティーで来ればまさか助けてくれるかもしれないけど、単独で来ている以上甘えは通用しない。

権現岳の名物?権現梯子。冬もなかなかの高度感。

梯子を下りきると山肌をトラバースする場面になる部分が少し緊張させられた。

一端少し急勾配を真っ直ぐ下りトラバースへと移るのだけど、下は気持ちいいように数百メートル程嫌な角度で落ち込んでいる、途中で枝一本なく、何も遮るものがないので、こういった場面で滑れば一環の終わり。さらにこの日は感覚的なものだけど日差しの影響で雪質が不安定に見受けられ雪崩れそうな状態。雪と一緒に流されるのもまっぴらご免である。

権現岳のくだりで話題にしていたパーティーが梯子を下っているのを撮影。

一瞬の緊張感が去り、再びキレットの稜線歩きに。自然が造り出した見事な銀世界の上を歩けるのは、山歩きの醍醐味。

平坦で休憩によさそうな場面もあり、腰を下ろし大休止。
旭岳のあたりではもうワンパーティーに出会う。こちらはガイド山行のようである。しかし、このパーティーは自分が歩いているコースを沿って来たのではなく、どうやら東面の沢筋から登攀具でこの稜線までバリエーションルート経由で上がってきた模様。ちょうど稜線に突き上げる手前の様子を観察できたので眺めていたのだけど「もの好きもいるのだなぁ~」なんて考えたり興味は尽きない。
いやぁしかし、素晴らしい山のアプローチの仕方。山との向き合い方も人それぞれである。

と、のんびり休憩していると権現で出会ったパーティーに追い越された。別に競争をしているわけではないので心理的には穏やかなのだけど、仮にこの先ラッセルなんて事になってくるとあまり後方に位置取ってしまえば、(ラッセル)泥棒呼ばわりされるのは不本意極まりない。
もう少し休みたかったけども、気持ちを切り替え再び荷物を背負い返す。
ガイド付きのパーティーは途中で下山していった。

ツルネを越え、さらに赤岳の迫力ある姿が目の前に迫ってくるようでますます荘厳さを増す。

冬期にこのルートを越えるのは初めてなので、一見しただけでは明確なルート取りは想像するしかない。凍結しており歩きにくいけど、とりあえず近づけば弱点らしき物があり、そこを狙って歩く。
おおまかなルートは夏道に沿うので、踏み外しをしなければ変な場所に迷い込むことも少ないので、間違っていないかなど確実な事を積み重ね、周りの状況を確認しながら一歩一歩進む。
今回のピッケルはPETZL/サミット。ペッケルは一本あれば普通は一生物に近いのに、なぜか複数本持ってたりする(苦笑)。これは一般的な雪山縦走には使いやすい一本。


今回の縦走もいよいよ佳境に突入。赤岳に近づくと再び岩の露出度が多くなり、勾配もきつくなる。

ただ、ものすごく岩壁という訳ではなく、そこは縦走ルートなので一般的な雪山装備があればザイルなど登攀具はなくても歩ける。

どっちみち一人で来てるので、ザイルを使いたい場面に直面しても、それはそれで無理な話だけど。

稜線では先行パーティーとは抜いたり抜いてもらったりしながら進んだ。

何か本格的な撮影をしながら歩いているので、どこかの山岳雑誌の取材なのだろうか?
シャッターを押している時に入り込むと悪いし、自分が原因で邪魔するのはまずい場面もあったりで、そういう時は自分も待機したりして。

けっこうカリカリな本格的な場所を歩いているけど、人に気を配りながら歩いていたので何やら妙な感じ。

赤岳の山頂を踏んで歩くのが当初の予定だったけど、いざ山頂が見えると急に登るやる気がなくなってしまった。1月に一度訪れているし何回も山頂には来ているので、モチベーションが出ないときは無理に歩いても意味がないはず。地蔵尾根でも歩けば、今回の縦走もさらに中身の濃いものになったかもしれないけど、ここは文三郎尾根を下ることに。

阿弥陀岳。ここは夏冬通してもまだ山頂まで歩いた事のない眺めだけの山。いつかは機会さえ恵まれれば歩いてみたい。

この日の文三郎尾根では尻セードで快調に進めずいぶん時間を稼げた。
シリ(尻)セードはスピードよく加速すると気持ちが良くかなり面白い。

さあ行者小屋にて幕営。

ポールが折れてしまったテント。でも行者小屋まで来れば昨日のような事はない。
充実した中身の濃いルートだったし、心理的にも開放されたし、お陰で飯もゆっくりと味わうことも出来る。2日目の夜は実に快適なテント生活だった。

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DAY-3

朝の行者小屋。ここの幕営地は風の通り道として知られている。吹きだまった雪が大量にあり小屋を隠すように積もっている。泊まった昨晩は快晴無風。運がいい。

山は家に帰るまでが下山と言うし、その格言というのか気持ち的な部分は本当に大切。ただ行者小屋から美濃戸口まではかなりの安全圏なので、昨日に引き続き天候もすこぶる良いし3日目は気持ちとしては楽なもの。



テントの周りの山々。ここは山に囲まれた好立地なので、赤岳や阿弥陀岳などをぐるりと見渡す事ができる。個人的には赤岳鉱泉よりはここで泊まるのが好み。

さすが冬でも人気山域の八ヶ岳。テント場で出会ったパーティーも阿弥陀のバリエーションルートをやるみたい。山と向き合う方法は様々。無事に帰ってこれさえすれば冒険的要素が大きいほど面白い。

自分は登攀スタイルよりは距離を歩き山を繋げる縦走スタイルに面白さを感じている。今回のような刺激的な事が味わえるルートでは、少しは冒険的な要素が入ってくれるので満足感は得られた気はする。

赤岳鉱泉とアイスキャンディ。

アイスキャンディという人工の氷壁ではアイスクライミングが楽しめるので毎年人手が多い。


帰り道中の北沢の歩きでは毎度々春の陽気のように日差しに恵まれる。厳冬期でも安定した天候が多い八ヶ岳ならでは。今回の計画では4日間休みを取り歩いたけど1日残しで順調に歩けてありがたかった。
冬山では予定通りに進めないことも多いので、入山する方は計画に予備日を設けれるならば是非取り入れてほしい。

下山最中に鉱泉スタッフの方々がゴミを下ろす歩荷作業に出くわした。こうして山の美化が守られているのだと思うと、ものすごく感謝したい気持ちで一杯に。

美濃戸山荘は営業していなかった。

ゴールである美濃戸口に到着。ここからバスが発車しているけど、ろくに茅野駅までのバス時刻を調べてこなかった罰なのか。バス停となる八ヶ岳山荘に到着した頃はバスが発車して間もないたタイミングだった。しかも、次のバスが来るまで2時間程度待たないといけない痛恨のタイミングに。

とりあえずコーラ。しかも最近めったとお目にかかれない瓶コーラ!!

特にやる事もないので、ザックの整理と自分へのお疲れさんの意味合いを込めたカレーライスとビール。
ものすごく旨かった。

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【 COUSE TIME 】
DAY-1/天女山口~三ツ頭と権現岳の中間点コル
天女山口(210分)前三ツ頭山頂170分)中間コル幕営地点
DAY-2/中間コル~権現岳~赤岳~行者小屋
中間コル(60分)権現岳山頂120分)ツルネ山頂180分)赤岳と阿弥陀の分岐45分)行者小屋
DAY-3/行者小屋~美濃戸口
行者小屋(20分)赤岳鉱泉140分)美濃戸口
※積雪状況により行動時間は大幅に変わります。

【 COUSE SITUATION 】
前三ツ頭までは樹林帯の広い道で危険箇所なし。そこより稜線に上がるので視界不良などのルート失に注意です。当日は強風とガスの中のホワイトアウト。コルの樹林帯に入るまではルートファインディングでした。
さらに赤岳までのルートは権現岳キレット通過などの稜線上での長時間の行動が続きます。
冬期はエスケープルートも少なく状況判断が重要です。
権現梯子の下降直後はかなり下に落ち込む斜面をトラバースするので、雪質によっては緊張する通過場所で、滑落などにも注意したい場所でした。感覚的には雪崩れても不思議ではない所でした。
赤岳も過ぎれば標高も下がり小屋も近づくので安心です。


Situation
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