2014-03-06

八ヶ岳スノートレイル縦走-後編-/八ヶ岳山域【長野県】

日程:4DAY/単独/2014年1月下旬
天候:2日目まではおおむね安定、3日目やや不良、4日目晴れ。
アクセス:JR特急あずさ号/JR茅野駅下車。アルピコ交通バスにて美濃戸口より入山。
※バスは季節運行あり要確認を。
Course MAP

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【行程】
DAY1:美濃戸口(バス停)~行者小屋
DAY2:行者小屋~赤岳~橫岳~夏沢峠
DAY3:夏沢峠~根石岳~天狗岳~黒百合ヒュッテ
DAY4:黒百合ヒュッテ~渋ノ湯

……雪の八ヶ岳。
ここ数年けっこう通いつめてる山域です。比較的ゆったりした山々が多い北八ヶ岳エリアと岩峰が連なる南八ヶ岳エリアと、非対称な表情を見せる八ヶ岳。秋に小淵沢から南北にかけ縦走した経験はありましたが、雪ではどんな表情を見せてくれるのか気になって今回歩いてみました。
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中編より続きです。 ☞前編レポートはこちらよりチェックしてください
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2日目の晩に夏沢峠に幕営し、3日目からはさらに北側、天狗岳を目指し縦走は続いていきます。
毎度の事ながら単独が多いのですが、どっぷり雪山に浸れている状況は何物にも代えがたい嬉しさがあります。

DAY-3
今回の縦走の核心部でもある赤岳から横岳の通過を終え、昨日は一息つけた夏沢峠。
小屋の吹きたまった雪を掘り起こし、ツェルトを広げて就寝。翌朝は紅茶とビスケットで簡潔に朝食を食べた。

冬山はすぐに体が冷えるので、温かいものを摂ると心のゆとりも生まれる。小屋が営業していないので雪を溶かして調理する水を作らなければいけない。単独の場合は手伝ってくれる仲間がいないので調理も時間がかかる。自分は栄養もある程度確保できるビスケットを朝食に選択している。
これなら朝の行動もスムーズ。あとは行動食を多めに食べて歩けば空腹感も起こらない。

 
夏沢峠では、こんな感じでツェルトを設営しました。あえてしっかり設営はせずにどの程度寝れるか試してみた。内部が結露で少し水分が氷結したので、外側はもっと状態が悪いと思ったのですが案外そうでもなかったです。

白い森が美しい。

日本最高所の野天風呂である本沢温泉の看板。夏沢峠より下った場所にあります。
夏に入浴した経験があるけど湯熱はぬるめだったので、冬も入れるみたいですけど、寒くない、どうなの?って感じ。

夏沢峠にある山彦荘にはモモンガ、ヤマネが棲みついてるそうです。こういう山小屋には心惹かれる自分。

夏沢峠では数名のハイカー達としばらく立ち話。今日の天候はあんまり良くないそうで皆さんけっこう心配気味だった。自分としては峠から天狗岳までの区間が冬初めて歩くルートなのが心配の種。
でも、峠からのエスケープは別ルートでも極端に短い距離でもないし感覚的には変わらないので、このまま歩きます。


と、いきなり方向が怪しくなってきたので確認すると、オーレン小屋へ下るコースを歩いたのです。
10分ほど経過したところで気づけたので大事には至らなかったですが、初歩的な間違いすぎて情けない!同じく天狗岳へ歩いた先行者のおじさんがラッセルしてるはずなので追いつこうと急ぐ。

わかんを履いて…追いつけるのか。ラッセルしてもらうのは申し訳なく悪い気分です。
結局かなり進んだところで再会、聞くと「この先はラッセル時間の予測がたたないし心配だよ。」との事で引き返す判断をされた。自分の不覚をお詫びして、途中でお別れをした。

引き続きラッセルでトレースを作り進む。しばらく歩いたタイミングで逆コースで歩いてくるグループと遭遇。聞くと「しっかりとトレースを作ってきたから安心して大丈夫!」との事。ありがたい。
特にお互い名乗らずに、少しの会話とすれ違った際にお礼を申し上げた。やっぱり山には助け合いの精神があるなと、こうした冬山ならでは光景は気持ちの良い瞬間でした。

先ほどのワンシーンは登山者による美学にさえ思えてくる。そんな感慨にふけりながら歩き続けます。
わかんはラッセルのよき相棒。でも、厳冬期用にと購入したダブルのゲイターブーツの図体が大きくて、いつもつま先はみ出しそうになる…汗。

途中にも大量のグループと鉢合わせ。普通に馴染んで休憩していると飴をくれました(笑)。

と、いきなり写真は根石岳の山頂に。途中に何枚か撮影してた気分だったけど結果的に一枚もなかった。不覚です。
でもお分かりの通りカチンコチンに凍結。積雪も少なくなったので、根石山荘ではわかんからアイゼンへと履き替えました。

根石岳から天狗岳までは岩も露出してくる場面が目立ってきます。写真は目の前に大きく迫ってくる岩峰。ここは左側(西側)を巻いてゆく。視界もガスに包まれ見えづらい感じに変化。
けっしてスムーズに楽にはさせてくれないあたり、なんか冬山に登ってるなと実感させられる場面のひとつ。

稜線上を歩くので、やはり雪庇も出現。
もう少し視界が悪ければ判断しにくいはずなので、雪庇には特に気を配ってしまう。

岩に張りついたエビの尻尾。綺麗ですね~。

天狗岳直下の尾根では梯子階段が出現。無雪期に縦走した時には記憶にない場所ですね。

稜線の際まで寄ってみると落ち込み具合がよく分かります。こんな場所で滑落すると絶対に無事では済みそうにないです。

天狗岳の山頂に到着。双耳峰になっているのでここは東天狗。もう片方が西天狗。
この日はまったくもって西天狗のシルエットが判断できないレベルのガス模様だったんで、そちらの登頂は諦めて黒百合ヒュッテ方面へ進んだ。

ガスで視界が効かず、天狗のピークから下る取り付きに少し迷いました。山頂にある看板の方向もやや向きがいまいちで、単純に進むとすっぱりと落ち込む行き止まりに。どちらかと言えば西天狗へ向いている看板へ歩けば取り付きを発見できます。

天狗岳からすぐに天狗ノ鼻の岩峰の通過に。ここは西側(茅野市側)を歩きます。
去年は岩峰の上を少しだけ歩いて進みました(☜勿論これは正規ルートではないので悪しからず)。

樹林帯に入ればほぼ安全地帯に変化。ここまで来れば残す黒百合ヒュッテまでは危険箇所もなく快適なスノートレッキングを楽しめる。

黒百合平に建つ黒百合ヒュッテ。

 
小屋にはお昼過ぎに到着したので、腹も減りましたし飛び込みで山菜そばを注文。麺、出汁ともに美味い。
ふらっと立ち寄っても軽食を提供してくれる小屋の存在は大いに助かります。

小屋はやっぱり魅力的…今回は最後の最後でお金で解決しようかとも考えましたが(苦笑)。
初心にもどり小屋の外で泊まります。
今回の山旅は荷物を軽くするために本なども持って上がらなかったので写真が唯一の楽しみに。
しかし、時間を潰すにも限界はあるので諦めて寝ることにしました。普段の生活では絶対に寝れない時間帯なんで、これが案外一番の贅沢かもしれません。



DAY-4
最終日は渋ノ湯へ下るだけなので、特に急がずにのんびりと朝を迎える。
やっぱりツェルトは結露した水分が凍り、風が強いとパラパラと自分に降りかかってくるので顔の辺りが少し寒い。このせいで何回か目を覚ましました。バラクラバを外したりと就寝時のレイヤリングを少々油断しました。

 
 
小屋の電力は太陽光と風車でまかなっている。よっぽど天候が悪くならないかぎり、ほぼ電源モーターに頼っていないみたいです。これだけの小屋を動かせる自然の力はすごい。

渋ノ湯までは樹林帯ののどかな下山道。今回のピリリとした雪山気分と明日からの日常にもどる事実を繋いでくれる気分になるコースは歩いていて調度よいですね。山を去る名残惜しさも同時に来るので心境は複雑だけど。

樹林の間からは中央アルプスが綺麗に見えた。

ついつい写真を撮るのに立ち止まる回数が多くなる。やっぱり広角レンズが欲しいなぁ。
もう今の一眼とは3年の付き合いなのに未だにレンズを買えていない。

分岐が3回あるけど、看板があるので分かりやすい。

とうとう下山。今回も無事に帰ってこれたようなので良かった。

下山後はお楽しみの温泉へ。
渋ノ湯は檜の浴場で湯熱、泉質ともに申し分のない名湯。って温泉も詳しくないですが勝手に思っているくらいお気に入りの日帰り温泉。もちろん宿の営業もしてるので別の機会で北ヤツ温泉ハイクもいいかもしれない。


今回の縦走は南八ヶ岳から北八ヶ岳を繋げて歩いた。赤岳から横岳の縦走路はガイドブックで見る限り経験者向けのようです。去年に計画をしていて歩くつもりだったので一年越しに訪れる事ができた。
仮に知り合いにでも「どれだけのレベルだった?」とか質問されるかも分からないけど、経験値も各自それぞれ異なるし、雪質も変化するので雪山では明確化できないのが正直なところ。
自分としてズバリひとつ確実に言える事は“何か起こった時に自分一人の力で解決できる覚悟があるならば”行けばいいと思う。それはグループなど誰かと一緒に歩く時でも同じ事。
別に大袈裟に言ってるのではなく、偽りのない自分の気持ち。

このブログを見ていただいて参考になるのは大変嬉しいところ。
でも、実際歩くのは自分ですから、何か歩くヒント程度になってくれればそれでいいです。



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【 COUSE TIME 】
DAY-3/夏沢峠~天狗岳~黒百合ヒュッテ
夏沢峠(70分)根石岳(105分)天狗岳(65分)黒百合ヒュッテにて幕営
○4時間0分※歩行時間のみ表記

DAY-4/黒百合ヒュッテ~渋ノ湯
黒百合ヒュッテ(90分)渋ノ湯
○1時間30分※歩行時間のみ表記


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