2014-03-23

甲武信ヶ岳敗退記

日程:3DAY/単独/2014年2月上~中旬
天候:1日目曇り、2日目晴れ、3日目雪。
アクセス:JR普通/JR小梅線信濃川上駅下車。川上村村営バスにて梓山バス停下車
Course MAP

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【行程】
DAY1:梓山(バス停)~八丁坂途中引き返し~毛木平ビバーク
DAY2:毛木平~十文字峠~武信白岩山手前~十文字峠
DAY3:十文字峠梓山(バス停)


……冬の甲武信ヶ岳。なんか心惹かれるものがあり今回歩くことに。
都心にも降雪があった今年、一回目の大雪後で間違いなく山にはどっさりと雪が積もってるはずだし、タイミングとしては良いのか悪いのか?しかも一人なのでラッセルはかなり覚悟をし今回のハイキングを決行しました。
関東を代表する奥秩父山塊ですし、秩父の山というのも味がある気がしたのも理由のひとつ。
タイトルにも書いてるし結果を先に行ってしまえば久々の敗退山行でしたが、以外と収穫が多かったのも事実。甲武信のピークには立ててませんが、気になる方は読んでもらえると嬉しいです。
さてさて、どうなる事やら…

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【山行前夜
行きはなるべく交通費を抑えたいので仕事終わりに現地へ直行。と言っても晩のうちに現地の最寄り駅(信濃川上駅)まで向かうのは無理というもの。そこで思いついたのが駅ステイ。
ネットで情報を調べると小淵沢駅が良さそう。
はたして本当に駅員さんが許してくれるか不安でしたが、快くOKしてもらい改札口のベンチをお借りして寝かせてもらえることに。これは本当に助かります。マイカーを持ってないので今後のハイキング計画を立てる上でも幅が広がった感じ。


DAY-1

JR小梅線へは中央線小淵沢駅から乗り換え。すごくいい感じのローカル路線な雰囲気が漂う。
別名、八ヶ岳高原線の愛称もあり山登りする自分にはネーミングも嬉しい。

標高1000mを超える場所を走っていく電車。なので雪の量も多く一面銀世界。野辺山駅なんて標高1345mなので普通に高い。まさに高原鉄道の名にふさわしい路線。

信濃川上駅で下車。ここからバスに乗り換えるけど、乗り継ぎ時間が2分程度なので田舎に来たのに都心並みのスケジュールで移動もうかうかしていられない。

駅にいた二宮銀次郎をパシャリ。

梓山のバス停で下車。

しばらくは市街地歩きで、全然山歩きの雰囲気はおあずけ。途中の分岐で十文字方面へ。

と、ここではやくも道路を塞ぐ大量の雪に遭遇。まさかの市街地ラッセルです(汗)。

今年一発目の大雪の影響はかなり残ってました。急に時間が読めなくなってやばい雰囲気に。

持ってきたワカンを早くも使うなんて…まさかの想定外でした。

そんな感じで毛木平の駐車場に少し遅れて到着。除雪もされてないので冬期は使用不可の様子。
登山道は駐車場をまっすぐ進み奥の樹林へと続いてゆく。

樹林帯の中を進んで行くと分岐の看板があり、十文字峠方面と千曲川林道との分かれ道に。

分岐からすぐの丸木橋を渡ると初めの頃は登山道の示す看板がいくつか出てくれるけど、その先は目印もあまり少なくなる。
この時点で時間は13時30分を過ぎている。スタートから4時間も経過してしまっている、やばい。
これから沢沿いを進み尾根に上げっていかないと一泊目の予定地のある十文字峠に到着できない。やっぱり雪の影響でかなり遅れが出てきている。

さらにバツの悪いことに動物なのか人間なのか判別しにくい踏み跡があり判断にかなり迷う。ナビゲーションでもコンパスかGPSなのかの選択を迫られ、いよいよ時間も少なくなってくる。
結果的には一本尾根を選択間違えたのですが、その尾根にも黄色テープの目印がつけてあり正確なコースと思わせるような部分があり、かなり迷わされてしまったのが大誤算。

十文字小屋には現実的に到達不可能な時間と距離だったので、諦めて毛木平にもどり初日ビバークとします。
今回はアルコールストーブをチョイス。trangia。
トラギにチムニー効果に優れている五徳をセット。このセットは安定感がバツグンで低温の環境でもしっかりとお湯を沸かすことが可能。これの詳しい紹介はまた別記事で。

手が冷えてかじかんできたので水筒に熱湯を入れて温めます。さらに寝袋に突っ込めば湯たんぽにも早変わり。これがけっこう快適。

寝床は駐車場にある東屋のベンチの下。寝袋のみで寝ることにしたけど完璧に風は防げず。ただ雪が降ってなくそこまで不快な気持ちでもなかったので、けっこう熟睡できた。


DAY-2

二日目は毛木平から一気に甲武信ヶ岳まで歩かないといけない。
ラッセル必死だけど、まったく雪の量が予測できないので夜明け前にスタート。


分岐もわかれ、樹林の沢沿いを歩くと昨日の終わり頃に発見した標識が。
コンパスの向きも進行方向に対して正確なので、とりあえずここから尾根へむかって直登してみた。GPSの地図表示もほぼ一致してそう。

すこし木々を掴みながらや、倒木をよけながら進むと登山道らしきところにぶつかり、写真の看板を発見した時は安心感がひろがった。結果的にはコンパスの正確性を改めて実感した。

しかし雪が多い。

赤テープを所々で発見。雪の量も多いし完全にルートファインディングに。
次の目標地点の八丁ノ頭まで八丁坂を登っていく。山で“八丁”とかフレーズは何となく苦しい言葉を連想させるのだけど、ここ甲武信の登りもけっこうな急坂を進まされる。

登り詰めたところで八丁ノ頭に到着。雪も多くなかなか大変な登りだった。
時間にしてすでに5時間が経過している(汗)。予想以上に時間がかかってしまった。看板には次の目標地点の十文字小屋まで残り30分と書かれているけど…

綺麗なんだけどラッセルがずっと続いて大変!!

十文字小屋が建つ十文字峠に到着。この写真を撮った場所から目の前の小屋まで(50mない距離なんだけど)歩くだけで15分もかかってしまう程本当に雪の量が多い。
時間にして八丁ノ頭から小屋まで2時間も費やしてしまった。看板の予想時間の4倍とは、やっぱり冬は時間の計算がまったくたたない(笑)。

とりえあずどこまで進めるか分からないけど、甲武信ヶ岳へと到着できると信じて先を行きます。

十文字小屋からひとつめのピークの大山へと続く急な登り。

登りをやり終えると大山のピークへ続く道が明瞭に。しかし積雪が予想以上に多く、かなり足元は不安定な状況に変化。トラバースをする時は滑ると一気に崖に落ち込む箇所があり気を抜けない。

このルートは初見だけども、山肌の表情が読みづらく少々難儀した。ピッケルを差し込んでも今イチ固定感にかけるので、直接手で雪をかきだしてみた。すると岩の感触があり無理矢理手をねじ込んで手がかりにしながら登ってゆく。
ここまで来ると立派なクライミングでもしてるような錯覚になる。ずいぶんしばらくして、ようやく鎖が露出してきたので、それを手がかりに登る。
苦労して登った分だろうか、合間に見た景色が綺麗すぎて一瞬今の自分の状況を忘れ去ってくれた。

そんな少しの格闘があり、大山のピークに達した。雪がこんもりと積もった山頂部はかなり不安定。
あまり足元の感覚が読めない、雪が崩れるのではないかと心配になるほどだった。
時間はすでに夕方の5時を指していた。

もうここまでの時間になれば素直に撤退すればよかったのに、この日は自分の中でも今まで経験してきた何かをぶつけたくなる気持ちになり、そのまま進むことを決心。
夜通し歩けば何とか山小屋まで到着できるんじゃないかと淡い期待を抱きつつ…それとカモシカ山行と言うのも方法としてはありなんじゃないかと思い歩を進める。
深夜の2時から3時までに甲武信小屋まで行ければ結果オーライとも。

しかし山は甘くはなかった。いや、全然、めちゃくちゃ厳しかった。
次のピークとなる武信白岩山まですら到達できなかったので、結果的には見通しが甘々だった。
一人ラッセルも、ここまでのレベルになってしまうと限界がある事も思い知らされた感覚。
そろそろ体力も限界になりそうで、完全にガス欠になり防御体力すら残らないのは危険すぎる。結局朝から晩までラッセルを続けても歯が立たなかった。
でも、辛いだけではなくしっかりと収穫も…
加藤文太郎の『単独行』に雪明かりで行動した経験が書かれていたけど、まさしくこの日はそんな様相だった。尾根の上部を歩いたので樹林帯ではあったけども、光が入り込む余地がたくさんあってヘッドランプ無しでも行動できたのは初体験。自然の織りなす優しい力が、美しいトレイルへと彩ってくれたようだった。なんだか嬉しくもあり、これは貴重な体験になってくれた。

再び大山に戻ってきたのが夜10時頃。そこから十文字小屋で二日目の夜を過ごした。
小屋に到着したのが確か11時20分は過ぎていた記憶があるけど、ハッキリと思い出せないほどこの日は疲れがどっと押し寄せてきた。さらに追い打ちをかけるように十文字小屋が冬期解放していなくて小屋の外で寝るはめに。張り紙では今年からどうも解放するのを止めにしているようだった。
うーん、運が今イチ向いてこない。駄目なときは何でも駄目かとも諦めの心境に。



DAY-3

昨日の撤退は悔しかったけども、思いがけないビバークだったし少しは学べたのかも?
そんな感じで気持ちを整理、なんとか下山モード切り替え。
しかし今回の山行は少々小さなミスが重なり時間的な余裕が消えていった感じがすごくあり正直な気持ちで言えば、めちゃくちゃ悔しいところ。
さすがにラッセルが応えたのか朝飯を食べても何となく元気になってくれない自分。けっこう雪も降ってきたのでトレースが消されてしまう前に行動開始。

予想通り昨日の踏んできたトレースに新雪が積もりだしてきた。気温もずいぶん低めな感じ。

ザックは山と道を使用。
装備も軽量化を意識して用意したので体力的にはずいぶん助けられた。

空模様は当然ぱっとしない。

今回の山は、体力的にも辛くて計画していた通り実行できなかった。道迷いがそのまま時間のロスへと繋がり後手後手に回ってしまったところが、かなり大きく、撤退原因。
山は別に人間を排他しようとはけっして無いだろうし、ただそこに自然に存在するもの。
あくまで人間の失敗によるものなので、勝ち負けじゃないだろうし、また練り直して零からだと自分に言い聞かした。悔しさもすごく残るけど、今回は失敗を納得する部分がありすぎました。

街に下りてきても相当な降雪状態。かなりの大雪。※この日はちょうど今年の大雪2回目の当日だった。

電車では小淵沢から中央線に乗り換えるつもりが、大雪のため遅延発生。まともに新幹線しか動いていなかったので財布には痛かったけど急遽変更し帰路についた。もし仮に無理して中央線にしていたら帰れなかったかもしれない。

家に帰ってからは焼き肉で身内とともにお疲れ会。たまらなく美味しかった。
山の後のビールも染みまくりで、野獣のごとき肉に食らいついた。


終わり。


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【 COUSE TIME 】
DAY-1/梓山バス停~八丁坂登り手前~毛木平駐車場
梓山BT(160分)毛木平駐車場(300分)毛木平駐車場にてビバーク
○7時間40分※行動時間・休憩時間含む

DAY-2/毛木平~十文字小屋~武信白岩山手前~十文字小屋
毛木平P(320分)八丁坂ノ頭(120分)十文字小屋(220分)大山(400分)十文字小屋にてビバーク
○17時間20分※行動時間・休憩時間含む

DAY-3/十文字小屋梓山バス停
十文字小屋(80分)八丁坂ノ頭(240分)梓山BT
○5時間20分※行動時間・休憩時間含む


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